海外進出101

アメリカビザの種類と実現困難な駐在員ビザ計画例2選


アメリカで仕事をする場合や長期滞在を考える中で、避けて通ることが出来ないのがビザの問題。これからアメリカ進出する日本企業にとっても、駐在員のビザ手配は必須です。

一方で、近年トランプ政権以降の移民法厳格化の流れにより、アメリカの就労ビザ取得が困難になってきており、外国企業のアメリカ進出を阻害する大きな要因となっています。

アメリカのビザの種類は合計30種類以上。ビザの種類によって要件やプロセスが異なります。正しいアメリカビザの知識がなく、ビザの部分を曖昧にしていると、当初予定していた駐在員派遣の計画が崩れてしまい、アメリカ事業展開の遅れや計画の大幅な見直し、そして最悪法律に反する採用などで罰則を受けるケースもありえます。

また、単に駐在員派遣のためのビザだけでなく、現地で採用を行うときにも同様のことが言えます。

特にグローバル企業で求められる、グローバル人材、バイリンガル人材や国際感覚を持つ人材を確保する際、その候補者が必ずしもアメリカ人でない可能性があります。ビザに関する知識が不足していたり、アップデートされていなかったりすると必要な人材を逃してしまうことになりかねません。

正しいビザの選択はアメリカ進出成功の第一歩といっても過言ではありません。

まずはアメリカビザの仕組みや種類を理解し、その上で御社の状況・進出形態に応じて最適なオプションを選ぶ必要があります。

本記事では、アメリカのビザの知識がない方にもわかりやすく、アメリカのビザの概要説明を行い、駐在員派遣の際にどのビザを選択すべきをご紹介していきます。

アメリカビザの種類

企業としてどのような候補者に対して、どのような種類のビザをスポンサー可能であるかを理解することは、必要な人材を確保する上で重要なポイントです。

まずは、主要なアメリカビザの種類をご紹介していきます。

これらのビザの中でも、駐在員を派遣したり、外国人を現地採用する際に必要な就労ビザは数種類に分類できます。多くの日本人が取得する代表的な就労ビザには次のビザがあります。

H VISA


個人の能力により得られる『就労ビザ』

L VISA


多国籍(2カ国以上)企業の駐在員として、米国駐在することで得られる『駐在ビザ』

E-1 VISA


日米間で取引がある貿易家のための『貿易家(取引)ビザ』

E-2 VISA


米国に投資を行うことで得られる『投資家ビザ』

また、就労ビザに加え、留学先の短期大学や大学で学んだ知識を活かすために与えられる、 期間限定の就労許可として、OPT(Optional Practical Training)と CPT(Curricular Practical Training)があります。

OPT


大学で学んだ知識を実践で活かす

CPT


学校に通いながらインターンをする

以下では、これらの就労ビザの「申請条件」「有効期限」「留意事項」をご紹介していきます。駐在員派遣のためのビザ情報のみを知りたい場合は次のセクション「駐在員ビザの選び方」に進んでください。

H-1Bビザ


日本企業が利用するケース例:
現地の大学を卒業した日本人の新卒採用を行う場合やアメリカでの就労許可を持たない現地の優秀な外国人を雇う場合 (Optional Practical Training(OPT)を使用し就労しており、次のステップとしてH-1Bの申請を行うなど)

申請条件:
アメリカ企業で専門的職業に短期間従事する外国人、もしくは政府協定により短期間国防関係の共同研究または開発事業に従事する外国人(いずれも例外的能力を有し、卓越した実績と能力を保持している者)。

このビザに該当する専門的職業とは高度に専門化された知識体系の理論的・実践的適用を必要とし、一般的には学士号またはそれ以上の学位が必要とされています。

ビザの有効期限:
ビザの有効期限最初の認可期間は3年で、更に3年延長が可能ですが限度は6年

その他:
他のビザへの変更も可能です。家族にはH-4ビザが発給されます。

手続きについて:
先ず専門家を雇用しようとする雇用主は、請願書を移民局に提出する前に、労働省に対して労働条件申請書(LCA)を提出して認可を受ける必要があります。

また雇用主はその認可証とともにLCAの条件を厳守する旨の誓約書、その外国人が専門的職業に従事することができるという旨の証明書類と移民局の指定する書類等を提出する必要があります。

請願をしてもらう外国人(ビザ申請者)は、その専門職に従事し得る資格を証明するため、その分野での学士号もしくはそれと同等の学歴または経験を証明する書類、また専門職に従事するための免許(州により異なる)、また学士号が無い場合には公認の学歴経験認定機関の認定書を提出する必要があります。移民局での認可がおりた後に申請することができます。

L-1ビザ(同系企業内の管理職転勤者ビザ)


日本企業が利用するケース例:
アメリカ進出初期の駐在員派遣のビザとして利用されることが多いビザ。新しくC-Corporationを立ててから1年半以内であれば、L-1ビザのNew Officeという枠でビザ申請が可能。また、アメリカ法人の売上規模が大きい会社の場合はL-1ビザが申請できるブランケットを持つことができます。

L-1ビザ雇用者の申請条件:
日米企業または多国籍企業(アメリカ企業は外国企業の親会社、子会社、提携会社または支店でなければなりません)で、50%以上の持ち株占有率の子会社(アメリカ法人)が必要。

たとえ過半数の株を所有しなくても、どちらかの会社が一方の会社をコントロールしていることを証明すればL-1ビザ関連会社として認められます。株の所有による親子関係が生じない場合でもLビザの対象となり得る場合もあります。

L-1ビザ申請者(被雇用者)の規定:
ビザを申請する直前の3年以内に最低1年以上(特殊な例を除いて)、経営管理者・管理職または特殊技能職として勤務した社員に適用。

また、アメリカにある支店、出張所、関連会社または親子会社に一般的な社員としてではなく経営管理者、管理職または特殊技能職として転勤する場合にも適用されます。

ビザの有効期限:
通常、最初の認可期間は1年ないし3年の期間のビザが取得できます。L-1Aビザ(経営管理者および管理職)の場合は、その後さらに3年間で通算7年まで有効。

L-1Bビザ(特殊技能職)の場合は、その後さらに2年間で通算5年まで有効

その他:
家族(配偶者および21才未満の子供)にはL-2ビザが発給されます。最長ビザ取得期間を超えた場合の再申請は、最低1年間アメリカ外に滞在した後に可能となります。または、Eビザか永住権に変更することも可能です。特にL-1Aビザから永住権へのビザ変更は優先就業者と見なされ他のビザに比べ容易です。

E-1ビザ (条約貿易家ビザ)


日本企業が利用するケース:
既に日米間で貿易を行なっており、直接もしくは代理店を通してかなりの額をアメリカで使っており、なおかつ全世界の取引量の51%以上が日米間の取引である必要があるなど、条件が厳しく、ほとんどの企業が当てはまりません。

前提条件:
まずアメリカと通商条約を締結している国の国籍である必要があります。日本はアメリカと通商条約を締結しているので申請可能です。

E-1ビザ雇用者の申請条件:
日本の子会社として申請する場合は、日本に親会社があり、50%以上の持ち株占有率の子会社(アメリカ法人)が必要。また、日米間において他の会社を通して取引を行う間接的取引ではなく、直接的な輸出入があり、全世界の取引高の51%以上が日米間の取引である場合に適用されます。

E-1ビザ申請者(被雇用者)の申請条件:
E-1ビザの申請者は管理職または特殊技能職者に限られており、管理職以外の一般従業員については対象にはなりません。また、管理職・特殊技能職としての勤務年数の条件はありません。E-1ビザの申請可能業種は一般的な商品の輸出入だけに限らず銀行、保険、運輸、通信、情報、広告、経理、デザイン、工学技術、経営コンサルタント、観光等でも適用されます。

ビザの有効期限:
基本的には5年間ですが、そのアメリカ企業が存続する限り無期限にビザの延長が可能です。

その他:
家族(配偶者および21才未満の子供)にはE-1ビザが発給されます。

E-2ビザ(条約投資家ビザ)


日本企業が利用するケース:
E-1ビザと同様、アメリカ内での過去の実績があって初めて申請できる。
設備投資の額が大きいなど、アメリカ内での初期投資が先行する場合は利用できる可能性がある。それ以外は前述のL-1ビザのNew Officeの枠で進出後、アメリカ内での投資実績 (例: 雇用早出, 現地サービスの利用など)を積んでから、E-2ビザの申請をするケースもある。

前提条件:
まずアメリカと通商条約を締結している国の国籍である必要があります。日本はアメリカと通商条約を締結しているので申請可能です。

E-2ビザ雇用者の申請条件:
日本に親会社となるべき会社を必ずしも必要としていません。業種により異なりますが、事業相当額の投資を行った持ち株占有率50%以上のアメリカ法人が必要です。

現地雇用を促進させる会社を優先対象としている為、投資金額が大きくても現地雇用を発生させない株や不動産等の投資では取得が不可能です。

従って、申請時の初期の段階で少なくとも1名以上の現地従業員を雇用する必要があります。 また、ただ単に資本金だけを銀行に預金しているのではなく、実際に投資を行う必要があり、ビザの申請は投資実績の確認後となります。

E-2ビザ申請者(被雇用者)の申請条件:
E-2ビザの申請者は投資家(オーナー)本人、管理職または特殊技術者に限られており、一般従業員については対象にはなりません。

ビザの有効期限:
基本的には5年間ですが、その事業が存続する限り再申請が可能です。

その他:
家族(配偶者および21才未満の子供)にはE-2ビザが発給されます。規定を満たすことにより永住権を申請することができます。

Eビザ、Lビザの配偶者の就労


2002年1月よりEビザ、Lビザの配偶者の就労許可申請が認められることになりました。配偶者ビザ取得後に就労許可を取得した場合、どこの会社でも就労することができます。

F-1ビザ(通常の学生ビザとはこのF-1ビザのことです)


日本企業が利用するケース:
ほとんどなし

対象:
小学校から大学院までの学生

ビザの有効期間:
1~5年 (滞在期間は学業が終了するまでの期間で、日付による期限はなし)

その他:
Fビザでの就労は不可ですが、学位を得られる学生に対しては卒業前後にトレーニングを前提とする、プラクティカル・トレーニングで1年間の就労が認められています。 (ただし、延長は不可) 家族に対してはF-2ビザが発給されます。

Mビザ


日本企業が利用するケース:
ほとんどなし

Mビザ対象:
学位を目的としない技術習得のための専門学校生または職業訓練生

ビザの有効期限:
一般的には短期間 (ビザの更新やF-1ビザへの変更は困難)

Jビザ(インターンシップ等の対象ビザがこれに当たります)


日本企業が利用するケース:
日本本社からの研修目的でアメリカ出向する際に使用されるケースが多い。一定レベルの英語力が求められます。

対象:
特別プログラムに認定された交換留学生から研究者に至るまで多岐にわたって発給される

ビザの取得規定:
1~2年で、3年までは延長可能

その他:
このJビザ取得者の多くはアメリカ内での収入を奨学金やスポンサーからの援助金等でまかなうことが認められており、その所得も無税となります。

ただし、ビザの変更については最低2年間アメリカ外に滞在しなければならない場合もあるため、事前に調査が必要です。家族に対しては、それぞれDS-2019フォームが発行された上で、J-2ビザが発給され、他の学生ビザの家族とは異なり移民局からの労働許可を得れば就労が可能です。しかし、各ケースにより条件が異なるので事前に調査が必要です。

Optional Practical Training


Optional Practical Training(以下、OPT)とは、主に学校で学んだことを実社会で実践するために、学生ビザを持っている生徒に対し、一般的に卒業後に最長12ヶ月(理系の学生に対し、一部例外があります)のフルタイムの就労を許可するものです。

職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。在学校のInternational Student Officeに問い合わせをすることで、OPT申請期限やプロセスに関しての詳しい情報が得られます。OPTは移民局の許可を必要とします。したがって、移民局からEmployment Authorizationカードが届くのを待つ必要があります (申請して2-3ヶ月)。

Curricular Practical Training


Curricular Practical Training(以下、CPT)とは、フルタイムの学生として1年(セメスター制の場合は、2セメスター)以上学校に通い続けた後、学校の許可を得ることで、学期中は週20時間まで、休暇や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムでの就労を許可するものです。

職種の選択にあたっては、専攻する学術領域に限られます。 CPTは、学校の許可のみで良く、移民局の許可を必要としません。在学校のInternational Student Officeや学部のオフィスに問い合わせをすることで詳しい情報が得られます。

ケーススタディ: 実現困難な駐在員ビザの計画例 2選


これまでアメリカビザの種類をご紹介してきました。
本記事の最後に、アメリカ進出の際に実現困難な駐在員計画例を2つご紹介していきます。

1. アメリカ法人の従業員は駐在員派遣のみで現地採用なし。

アメリカ事業の推進は慣れないアメリカ人従業員を雇うよりも、信頼できる自社社員のみで構成したいというニーズをよく耳にします。

結論から言うと、この計画はビザの観点から難しく、長期で事業推進する上で大きな壁となり得ます。

これから新規でアメリカ進出の駐在員のビザの計画を立てる際に1つの目標となるのがE-2ビザの取得です。

一般的には、新規進出する際にL-1ビザのNew Officeの枠で駐在員のビザを確保 (※ほとんどのケースで1年のみ)し、その後にE-2ビザに切り替えて長期滞在を狙うという計画を立てるケース、または初期投資と現地雇用を行い進出時にE-2の要件を満たすケースがほとんどです。

原則、E-2ビザの申請要件にアメリカでの雇用創出が求められますので、現地採用なしだと、E-2ビザの申請要件を満たすことができず、アメリカでの長期事業継続が難しくなります。

2. アメリカ進出をスモールスタートで始めたい

先ほどのニーズと同様、アメリカで事業を新規展開する際はなるべく初期費用をかけずにスモールスタートでやりたいというニーズも頻出です。

しかし、先ほどのE-2ビザの申請の際の要件として、前述した雇用創出以外にも、一定額の投資も求められます。そのため、スモールスタートを前提としてアメリカ事業計画を立てると、駐在員の長期滞在ができなくなるリスクがあります。

この場合はアメリカに駐在員を雇わず、アメリカ法人は完全に現地従業員のみで構成するという方法を取らざるを得なくなります。

アメリカのビザは常に変化しているので専門家へご相談を!


上記ビザの情報はあくまで概要であり、就労ビザに関する規制や法律は非常に複雑な上に頻繁に変更されます。また、個人や雇用主の状況によって大きく異なるため、移民局(USCIC) の 公式ウェブサイト等での情報の確認や、必要に応じて移民弁護士、専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めします。

また、米国パソナではアメリカで35年にわたり、このような就労ビザの問題を解決しながら海外で活躍する企業様をサポートしてきました。ビザに関するケーススタディも豊富にありますので、不明な点がある場合は一度、こちらの問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。


アメリカへの進出でお困りのことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせは、 03-6734-1273 午前9:00-午後5:00 (日本時間 土日祝日除く)