海外進出101

アメリカの従業員ハンドブック (Employee Handbook)と作成時8つのポイント


「Employee Handbook(従業員ハンドブック)は必要ですか?」

アメリカに進出している企業様からこのような質問をよく頂きます。

Employee Handbook(従業員ハンドブック)の作成は法律によって義務付けられてはいませんが、現地社員を雇用する際には、作成することをお薦めしています。従業員ハンドブック作成は従業員管理や統制の上で重要のため、ほとんどの企業が作成しています。

また、しっかりしたEmployee Handbookを作成することで、不当解雇や差別などの従業員訴訟を防げることもありますので、リスク回避にも有効です。

本記事では、そもそもEmployee Handbookとは何か?、なぜEmployee Handbookを作成すべきか、そしてどういう内容を盛り込むべきかを詳しくご説明していきます。

Employee Handbook(従業員ハンドブック)とは?

日本の就業規則のように、企業のポリシーや働くうえでの各種規定を分かりやすく統一して表現したものです。企業ポリシーを明確にし、全従業員に対して公平に適用することで、職場環境の公平さを向上させるために役立ちます。

Employee Handbook(従業員ハンドブック)の主な目的は以下の4つとなります。

従業員ハンドブック制定の目的

  1. 経営者と従業員のコミュニケーションを促進するため。企業理念や会社が目指すビジョン、また従業員に期待することを伝える役割を担う。
  2. 会社としてすべての従業員は平等であり、企業が従業員を公平に扱うことを明確にするため。一定ルールをつくることにより、誰もが公平に職場で活躍できるような組織づくりに繋がる。
  3. 会社と従業員のトラブルを防ぐため。従業員ハンドブックがしっかりと作成されていて、ポリシーが公平かつ一貫性をもって活用されている場合、企業を法的リスクから守るツールとなり得る。
  4. 社員に対して会社の考え方・ポリシーをはじめ、職場規定、報酬と福利厚生、退職手続きなどを就業規則を明確にすることは組織を強くするだけでなく、個々のモチベーション向上にも繋がる。

どのような内容が盛り込まれるのか?

Employee Handbook(就業規則)の構成・内容については統一されたフォーマットのようなものは存在せず、企業によって異なります。

就業規則はあくまでも規定のため、実際の運用や実行は現場マネージャーや管理者の責任となります。そのため、マネージャークラスを対象に、就業規則の理解促進や、管理や経営力を高める研修を実施することも大切です。

以下では一般的に Employee Handbook(就業規則)にて、網羅されている項目をご紹介します。

冒頭・会社概要 (Preface & Company Profile)

  • 歓迎メッセージ
  • 会社の歴史・文化・バリュー・ミッション・事業内容・ゴール
  • EEO、At Will、その他関連法令への準拠
  • EEOやその他
  • 企業ポリシー (オープンドアポリシー、ハラスメントの禁止など)

職場規定 (Workplace Policies)

  • 服装規定
  • 出張規定
  • 携帯・パソコンの私的使用
  • 駐車場の利用
  • 勤務時間、時間外労働、休憩時間
  • 病気、私用での欠勤
  • 職場での安全
  • 職場での紛争・トラブルの解決
  • ペット連れ込みに関する規定
  • 人事記録と個人記録
  • 職場での勧誘行為
  • 従業員区分
  • 試用期間
  • 緊急事態の連絡

従業員の行動 (Code of Conduct)

  • ドラッグ、アルコールに関する規定
  • 副業に関する規定
  • 倫理的行動規範
  • ソーシャルメディア使用に関する規定
  • 企業所有物の使用
  • 機密情報の取り扱い
  • 利益相反事項
  • 顧客データとプライバシー
  • クライアントからのギフトの受け取り

給与・福利厚生 (Compensation, Benefits and Perks)

  • 給料の支払い方法・支払日
  • 時間外手当ての規定
  • 休暇・有給休暇
  • 退職金共済制度 (Retirement plans)
  • 保険
  • 教育給付金 (Training Benefits)
  • その他の福利厚生制度

業務評価 (Performance)

  • 業務評価の方法・頻度

従業員解雇・退職 (Employee Resignation and Termination)

  • 解雇要件・条件
  • 解雇の際のプロセス

権利の放棄事項 (Disclaimer )
署名 (Signature)

前述の通り、Employee Handbook (従業員ハンドブック)に記載する内容は企業によって異なります。そこで、以下ではEmployee Handbook (従業員ハンドブック)作成時のポイントをご紹介していきます。


Employee Handbook(従業員ハンドブック)作成時の8つのポイント

1. 従業員ハンドブックは契約書ではない

Employee Handbook(従業員ハンドブック)は契約書ではありません。

「企業ポリシーを十分理解している」という同意を社員から得る目的で従業員ハンドブックの受領証に署名をもらいますが、これは契約を意味するわけではない点に注意が必要です。

アメリカでは「at will」と言われる考え方を土台とした雇用関係であるため、一般的には企業と従業員の間では雇用契約書は締結されません(役員やプロジェクトベースの委託案件は除く)。

2. At willやEEO、関連法規に準拠している旨記載する

従業員との雇用関係が「at will」に基づいたものであること、ポリシーが「EEO: equal employment opportunity(雇用機会の均等)」に基づいていること、そして移民法への準拠、従業員が直接マネジメントに提言できる「オープンドアポリシー」、そして差別またはハラスメントの禁止をしていることを明記することをお勧めします。

3. 職場規定・従業員の行動は可能な限り具体的に

職場規定・従業員の行動に関しては、分かりやすく具体的に記載することで、曖昧な部分や誤解がでないようにすべきです。日本での「当たり前」は言語・文化が異なる従業員には通用しないケースがあるので、明確にしておくことをお勧めします。

4. 評価方法・報酬・福利厚生の方針を明確に

終身雇用制度や年功序列が存在しないアメリカでは、業務評価の方法、報酬・福利厚生に対する企業の方針を従業員に明確にすることが重要です。従業員のモチベーションアップや従業員間の公平性に直結します。

5. 個別の給与額・残業代などはOffer LetterやJob Descriptionに記載

従業員ハンドブックに記載する項目は全従業員に当てはまるポリシーであり、報酬に関しては給与支給日、時間外労働手当など、福利厚生に関しては付与内容と対象条件などについて明文化するとよいでしょう。なお、個別の給与額、残業代の有無や職務内容に関しては、従業員ハンドブックではなく、別紙のOffer Letter (内定通知書)やJob Description (職務内容記述書)に記載します。

6. 解雇に関する規定・プロセスを明記

また、不当解雇などの訴訟トラブルを回避するために、解雇に関する規定も具体的に記載しておくことをお勧めします。

具体的には、以下のように解雇に至るまでのプロセスを明文化しておくべきです。

  1. 口頭での注意 (Verbal warning)
  2. マネージャーとのミーティング (Informal meeting with supervisor)
  3. 正式な警告 (Formal reprimand)
  4. 懲戒訓練 (Formal disciplinary meeting)
  5. ペナルティ (Penalties)
  6. 解雇 (Termination)

7. Disclaimer(権利の放棄事項)を忘れず盛り込む

雇用者は従業員ハンドブックに拘束されず、また従業員からの不満や主張を回避できるよう「Disclaimer(権利の放棄事項)」を忘れず記入するべきです。ディスクレイマーには、従業員ハンドブックが契約ではないことを改めて明示したり、「at will」の再確認、また雇用者が雇用関係の条件を変更することができるなどを盛り込みます。

8. 従業員ハンドブック受領書への署名と保管

最後に、これまで紹介した内容に加え、「従業員ハンドブック受領書」を添付し、全従業員からの署名と日付の記入を得たものを保管。アップデートする度に署名を更新する必要があります。人事問題が起きた場合には法的書類として提出できるよう管理することが重要です。


運営できてこそ活きるハンドブック

インターネットなどから従業員ハンドブックのテンプレートを入手し、そのままハンドブックとして私用しているケースも見受けられます。ただ、なかには運用できない規定や項目もあり、もし企業がそれを遵守できない場合は逆手に取られるケースもありますので注意が必要です。自社の事業内容、社風、規模などに即した内容を作成することが大事です。

また、ハンドブックの内容については、「作成したまま10年近くそのままにしている」という声をよく耳にしますが、2~3年に一度の見直しが必要です。例えば昨今ではSNSの書き込みに関するルールなど、時代に応じて追記や修正が必要な項目が多々あります。また、州法は随時変わりますので、定期的に見直すことをお薦めします。

「自社のポリシーが適正かどうか分からない」や「表現をどこまで厳しく書くべきか分からない」というお悩みをよく伺います。弊社が毎年取りまとめている「アメリカ進出日系企業の給与及び福利厚生に関する調査結果」などをご活用頂き、スタートラインとして、業界や他社の水準の理解促進に役立ててほしいと思います。

繰り返しになりますが、報酬や福利厚生は優秀な社員の定着にも繋がるため、従業員ハンドブック作成は人事戦略に関わる重要な役割を担います。基準値を知り、法的なアドバイスを取り入れて頂きつつ、自社にあったポリシーを作成し、運営可能な従業員ハンドブックをつくることが最も重要です。

最後に、弊社米国パソナではアメリカで35年にわたり、アメリカ現地の日系企業様の採用活動をサポートしてきました。

アメリカでの従業員ハンドブック (Employee handbook) 、ジョブ・ディスクリプション、雇用関連書類の作成を行う「人事スタートアップパッケージ」や企業の採用活動を代行する「採用代行サービス(RPO)」、新卒者から専門職種、エグゼクティブまで、バイリンガル、マルチリンガルの優秀な人材を紹介する「人材紹介サービス」、貴社のニーズに合った即戦力人材を、必要な時期に必要な数だけ派遣することができる「人材派遣サービス」などを展開しております。

アメリカの採用に関するケーススタディも豊富にありますので、アメリカでの採用に関して不明な点がある場合は一度、こちらの問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。


アメリカへの進出でお困りのことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせは、 03-6734-1273 午前9:00-午後5:00 (日本時間 土日祝日除く)