海外進出101

アメリカ事業進出計画 – 進出州・進出形態・パートナーの選び方


アメリカ進出計画の全体像

「アメリカ進出するのに必要なコストは?」
「進出した際の法的なリスクは?」
「そもそも自社製品のニーズが存在するのか?」

これからアメリカ進出を検討する場合、解消しないといけない疑問、やらなければならないタスクが山積みです。

また、アメリカ進出を希望する各社のニーズは様々で「アメリカ市場の開拓をしたい」というものから「現地の優秀な人材の採用」や「取引先からの要請」によるものまで様々です。

「自社のアメリカ進出計画、まずはどこから手をつければいいのかわからない。」

そんな企業様に向けて、本記事ではアメリカ進出の全体像を示し、まず初めに決めるべき3つの事柄をご紹介します。本記事を通して、御社のアメリカ進出計画を具体化する一助になれば幸いです。

※これからアメリカ進出計画策定される企業様は「アメリカ進出で失敗しないための76個のチェックリスト 〜進出計画から拠点設立まで〜」もご確認ください。

まずアメリカ進出の流れの全体像をご紹介します。
アメリカ進出のフェーズは大きく3つ、『調査・計画』『設立準備』『事業展開』となります。

調査・計画

情報収集

  • セミナー
  • 視察

フィジビリティ・スタディ

  • 市場調査
  • テストマーケティング

ビジネスプランの作成

専門家・パートナー探し

事業形態の確立

人材研修

  • 異文化研修
  • 語学研修
  • コンプライアンス研修
  • マネジメント研修

設立準備

拠点設立

  • 会社/法人設立登記
  • 業務に必要なライセンス取得

ビザ取得

  • 現地責任者のビザ手続き (Lビザ/Eビザ)

人員体制の整備(人材募集・採用)

  • 駐在員
  • 現地社員

管理部門の立ち上げ

会計税務相談

銀行口座設立

オフィス/店舗探し

福利厚生・保険

事業展開

販路開拓

  • 戦略・オペレーション
  • 展示会出店
  • 代理店開拓
  • プロモーション

人材募集・確保

法務

会計

弊社、米国パソナがサポートしてきた事例をベースに考えると、『調査・計画』段階は6〜24ヶ月ほど、『設立準備』は0〜5ヶ月ほど、『事業展開』に到るまでには4〜5ヶ月ほどかかっています。

「アメリカ進出するのに必要なコストは?」
「進出した際の法的なリスクは?」
「そもそも自社製品のニーズが存在するのか?」

冒頭で触れた、これらの疑問は『調査・計画』段階で明確にしていきます。

これらの疑問に応えるためには、「アメリカのどの州に進出するか」「進出形態はどうするか」をある程度明確にする必要があります。その上で御社のアメリカ進出の目的に応じて、「適切なパートナー選び」が必要になります。

例えば、アメリカ市場開拓が主な目的の場合は、市場調査・テストマーケティングを入念に行う必要があるので、マーケティングや調査会社との連携が、工場設立が目的の場合は、現地の不動産事情に明るい不動産屋との連携が必要になります。

以下では 1) 進出州をどこにするか、2) 進出時の会社形態はどうするか、3) アメリカ進出時に連携すべきパートナーはどのような会社か、をご紹介していきます。


進出州の選び方は州の主要産業か税制・手続き面から選ぶ

以下では、進出州を選ぶ際の2つの軸「州ごとの主要産業をベースに決める」「税制・手続き面の優位性から決める」をご紹介していきます。

進出企業の中には「デラウェア州」を希望する企業様がいらっしゃいますが、「デラウェア州」のメリット・デメリットもご紹介していきます。

すでに進出州を決めている場合は、次の「進出形態」まで飛ばしていただいて構いません。

1. 州ごとの主要産業を理解し、進出州を決める

アメリカは広く、各州により様々な特色があります。

進出ご検討の際には、「どの州で何のビジネスをするか?」についてまず情報収集をするべきです。下記図に地域ごとの業界図がありますのでご参照ください。

アメリカの地域別業界図

アメリカの地域別業界図

各州ごとの産業の特徴を説明していると、本記事では収まりきらないので今回は省略しますが、参考までに弊社がサポートしてきたアメリカ進出例をご紹介します。

アメリカ進出における近年の傾向は次の通りです。

1. ソフトウェアやIT系サービスの市場調査・マーケティングを実施のために進出: カリフォルニア州
2. 自動車/航空業界等の製造業の工場(倉庫)の建設を伴う進出: テキサス州、アラバマ州、サウスカロライナ州、テネシー州
3. 飲食業界の進出: ニューヨーク州、カリフォルニア州

IT・ソフトウェア関連だと、シリコンバレーやロサンゼルスがあるカリフォルニア州への進出が多く、中には現地の日系企業向けにサービス展開を行い、顧客基盤を築き、その後に現地市場を狙いに行く企業様もいらっしゃいます。

また、自動車関連の製造業に関しては近年マツダとトヨタが合弁会社を設立したアラバマ州、トヨタのアメリカ本社があるテキサス州、航空関連だとBoeing社で有名なワシントン州、サウスカロライナ州が人気です。特にフロリダ、アラバマ、サウスカロライナなどの南部各州は税制優遇を使って自動車や航空機製造などのメーカー誘致に力を入れています。

飲食系は健康志向からの和食人気が根強いニューヨーク州、カリフォルニア州の都市部が人気です。

各州政府により、インセンティブがあるケースもあるので、日本にある州政府事務所や州のウェブサイトにてリサーチすることをオススメします。

アメリカ州政府協会ホームページ: “州政府事務所一覧

The U.S. Economic Development Administration: “ECONOMIC DEVELOPMENT DIRECTORY

州ごとの主要産業を理解した後に考慮すべきは税制や手続きの部分になります。

2. 税制・手続き面から進出州を選ぶ

アメリカでビジネスを行う際、州ごとに法律が違う点に留意する必要があります。

ただし、ほとんどの州では「模範事業会社法(Model Business Corporation Act, MBCA)」を模範法として州の法律を形成しているので、大きな違いがないのも事実です。

では、どうやって進出州を選択するか?

結論を先に言うと、特定の州でのみ営業活動をする場合は、該当の州で法人設立するのが望ましいです。その理由は、支払う税金額を減らすことができ、税務申告の手続きが楽になるからです。

アメリカには「州内法人」と「州外法人」という考え方があり、法人登記をしている州で営業活動をする場合「州内法人」、それ以外の州で営業活動をする場合「州外法人」という位置付けになります。

例えば、登記はニューヨーク州で、ニュージャージー州でも営業活動をしている場合、ニューヨーク州とニュージャージー州の両方で税務申告する必要があります。

そうした面倒な手続きをできる限り、回避するために営業活動を行う州で法人設立することをおすすめします。こちらのページにてアメリカの各州ごとの税率をまとめましたので、参考にしてください。

一方で、全米規模で営業活動を展開する場合は、アメリカでHoldingsを作って、各州にLLC(※1)を作るという方法を取るところもあります。(※ LLCとはLimited Liability Companyの略。詳しくは後述)

その理由はLLCを設立することで、パス・スルー課税の恩恵を受けることでき、会社レベルでかかる法人税と株主レベルでかかる配当所得の税金の二重課税が回避できるメリットがあり、Holdingsで一括で税金申請ができるためです。

Holdingsを設立する際は、デラウェア州を選ぶケースが多いです。その理由は以下の通りとなります。

デラウェア州が人気の理由

Fortune 500に掲載されている企業の66%以上はデラウェア州で設立されていると言われています (参照: デラウェア州のウェブサイト)。その主な理由はデラウェア州が提供している、税制優遇、ビジネス側に有利な法制度などがあります。

以下、デラウェア州にて法人設立するメリットをご紹介します。

[デラウェア州のメリット]

  • ビジネスへの税制優遇が豊富。例えば、デラウェア州外の売上に関して法人税がかからない。(※ただし、法人登記維持のために毎年フランチャイズ税はかかる。デラウェア州のフランチャイズ税の計算方法に関してはこちらをご参照ください (英語))
  • デラウェアは他州に比べてビジネス関連の訴訟事例が豊富で、何が許され、何が許されないのかが判断しやすく、紛争コストを抑えることができる。また、経営者に対して大きな裁量権を与えている。
  • 陪審員(juries)ではなく、裁判官(judges)が裁定を下す。また会社法に精通している裁判官が多く、複雑な事案の経験を持っている
  • デラウェアでの会社設立要件はとても柔軟。例えばデラウェア州内での事務所設置が不要、州外の取締役会開催が可能であるなど、州外に拠点を置く企業でも設立が容易。

ただし、デメリットも存在します。

特にアメリカ進出して間もない、特定の州のみで営業活動をしている企業にとっては
税制面・手続き面でマイナスであることの方が多いです。

例えば、実際はカリフォルニア州でビジネスをやっていて、デラウェア州で登記している場合、会社維持のためのフランチャイズ税を両方の州に納める必要があり、なおかつ決算資料も毎年カリフォルニア州とデラウェア州両方のフォーマットに合わせる必要があります。

以上から、全米規模で営業活動を想定していない場合、営業活動を行う州で設立登記するのが望ましいと言えます。


「C-Corporation vs. LCC」進出形態の選び方

次に「進出する際の事業形態」も重要です。進出形態によって税務や法務が全く異なります。

1. ほとんどの日系企業が『現地法人』を選ぶ理由とは?

進出形態は主に「現地法人」「支店」「駐在員事務所」の3つがあります。
それぞれのメリット・デメリットをまとめると以下の通りとなります。

現地法人 支店 駐在員事務所
メリット アメリカ事業を本社から切り離すので、法的・財務的リスクを切り離すことができる。

ビザ取得が比較的容易である。

日本本社と会計を通算できるので、アメリカ事業が当面赤字が見込まれる場合は節税対策になる。 そもそも、登記上認識されない事業体なので、設立登記が不要で連邦法人税はかからない (ただし、給与などの所得税はかかる)
デメリット 本社への損益算入ができない可能性がある。(赤字相殺が出来ない) アメリカ支店で訴訟や税務調査が発生した場合、日本本社に責任が及ぶ。 営利活動ができない (市場調査・同行は可)
どこまで営利活動か判断しづらい。 -> 法的リスクになるのでほとんどはそれ以外の形式にする

続いて、項目別で比較した表を記載します。

弊社が立ち上げをサポートを行わせて頂いている企業様のほとんどは『現地法人』としての進出です。その理由としては、訴訟に備えたリスク管理 です。

アメリカ進出における、現地法人と支店の違いは、法人格があるか、ないかというところです。支店の場合、営業活動は可能ですが、ビジネス上、雇用上で起きた訴訟の請求先は日本にある親会社になります。

一方、現地法人の場合は法人格が分かれているので、現地法人への請求となります。このような観点から「訴訟大国」と呼ばれるアメリカにおいては、現地法人での進出事例が多く見受けられます。

進出形態として『現地法人』を選んだ場合、その中でもさらに細かい区分けが存在します。
以下で詳しく説明していきます。

2. 現地法人の形態としてはC-Corporationが一般的。その理由とは?

現地法人の中の区分けは大きく以下の6種類となります。

  • C-Corporation
  • Partnership
  • LLP
  • LLC
  • S-Corporation
  • Sole Proprietorship

しかし例えば、『Partnership』は無限責任を負うリスクがある、『S-Corporation』はそもそもアメリカ市民もしくは永住権がないと取得できないなどの制限があります。

この中でも関連するのは『C-Corporation』と『LLC』という2つのタイプになります。それぞれのメリット・デメリットは以下の通りとなります。

法人形態 メリット デメリット
C-Corporation – 出資範囲に限る有限責任 – 二重課税 (会社レベルと株主レベルでそれぞれ税金が課される)
LLC – 出資範囲に限る有限責任
– パス・スルー課税が適用でき、二重課税を回避できる。
– 個人所得と事業損失を相殺できる
– C Corporation に比べて政府に提出する書類が少ない。
– 出資比率に関わらず、1人1票の議決権があるため、複数人で出資している際はトラブルになる可能性がある
– 比較的新しい形態なので、漠然とした信用不安のリスクや判例不足による責任の所在について不明瞭になるケースもある

弊社でサポートしたきた実績ベースで見ると、アメリカ進出する日本企業の大半はC-Corporationを選択します。その理由は、議決権の仕組みなど、LLCは小規模な法人形態を前提で作られており、中規模以上の事業展開に不向きなためです。

アメリカ進出企業がLLCを利用するケースは前述の州ごとにLLCを設立するケースを除いてあまりありません。


タスク別、アメリカ進出時に協力すべきパートナー選び

最後に重要なのが、アメリカ進出時のパートナー選びになります。

『調査・計画』段階では市場調査やテストマーケティング、
『設立準備』段階では法人・拠点設立、駐在員のビザ取得、人員体制の整備、
『事業展開』段階では販路開拓、法務、人材確保、会計』など

アメリカ進出をする際は人材、マーケティング、法律、会計、不動産をはじめ、多岐にわたる専門性が求められます。

これまでアメリカでビジネスをした経験のない会社が全て自社で実行するのは現実的ではありません。また、例えできたとしても多大な時間と労力がかかります。

そこで、パートナーの活用が鍵になります。

アメリカ進出をスムーズに行うためにも、事前のパートナー選定やリストアップがすることをオススメします。以下にタスク毎に連携すべきパートナーをまとめました。連絡を取るべきタイミングも記載していますので参考にしてください。

主なビジネスパートナー コンタクト時期
会社設立 弁護士 設立前
会社法 弁護士 設立前
税務 会計事務所 設立前
ビザ 移民法弁護士 設立前
銀行口座開設 銀行 設立前、口座開設は設立・EIN取得後
オフィス・住居 不動産 オフィス契約の2ヶ月前
損害保険・労災 損害保険会社 オフィス契約の2ヶ月前
健康保険 健康保険会社・ブローカー 保険加入の2ヶ月前
経理会計 Pasona NA 業務開始3ヶ月前
人事・給与 Pasona NA 給与発生の2ヶ月前
採用 Pasona NA 雇用開始4ヶ月前
市場調査・事業策定 コンサルタント・調査会社・マーケティング会社 進出決定前〜

*コンタクト時期は、事業計画のなかの最低日数のめやすです。州や時期・事業的事情により、表記よりも時間がかかる場合があります。


米国パソナでは進出に必要なパートナーの紹介が可能

最後に、弊社ではアメリカの経理業務のアウトソーシングサービス人材の紹介だけでなく、日英両方の言語で対応可能な各パートナーのご紹介も行っております。

 

これまで約35年をかけて培ってきたデータ・実績を元に、アメリカ進出にかかる全体費用の概算、アメリカ進出時に起こりやすいリスク事例や進出事例、進出希望地域の雇用情勢や給与相場に関する情報もご紹介可能です。

これからアメリカ進出を検討するという方でもご相談可能です。問い合わせフォームよりご連絡ください。相談無料です。


アメリカへの進出でお困りのことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせは、 03-6734-1273 午前9:00-午後5:00 (日本時間 土日祝日除く)